硬券とは何でしょうか? |
硬券は鉄道会社の乗車券のスタンダードとして、日本の明治の鉄道創業期より使用されていた、厚紙で出来た切符の事です。ボール紙で出来た材質の切符で、0.7ミリ程の厚紙の切符です。現在の自動券売機で発行する切符とは厚みが全く違い、自動改札機に通す事は出来ません。厚紙で硬い券ですので硬券と呼ばれております。 |
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写真は旧国鉄の硬券で、左からA型券、C型券、右上はB型券、右下はD型券です。 |
硬券には4つの規格サイズが有ります。 |
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A型券「縦30ミリ×横57.5ミリ」 |
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このサイズは券売機でも手にする大きさで、切符としては一番身近な大きさです。57.5ミリなんて中途半端なサイズですが、これには理由が有ります。鉄道の技術は明治に海外より輸入されており、切符の印刷機も同じく輸入されてました。輸入規格サイズが「インチ」ですので「寸」をえて「ミリ」へと直し、最終的に30ミリ×57.5ミリとなりました。「A型券」は正に世界の硬券の基本サイズとなるのです。 |
B型券「縦25ミリ×横57.5ミリ」 |
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A型券より縦が5ミリ短く、硬券では一番身近な大きさです。入場券や近距離券で多く使われました。B型券は用紙節約の為に考案された大きさです。硬券板紙の断裁前の全紙から取れる枚数は、「A型券」で108枚で「B型券」は135枚です。硬券板紙はパレットに10R(全紙で400枚)を積んでおりますが、「A型券」を「B型券」にするだけで単純計算で1パレットで10800枚も差が出て来てしまうのです。 |
C型券「縦60ミリ×横57.5ミリ」 |
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このサイズは印刷場からの要請で生産を縮小されたと聞きます。それは製作しづらいからです。C型券以外は長方形ですが、対してC型券はほぼ正方形です。硬券は製造過程での断裁作業で、一部の原紙が90度回転してしまう事がどうしても有ります。回転してもすぐ直せますが、ほぼ正方形の60ミリ×57.5ミリですと、縦か横かの区別が付きにくくなります。C型券は他のサイズと比べて生産効率が悪く、この事から印刷縮小へと導きました。切符でのサイズでほとんどに目にしませんが、食券販売機などの領収書など券売機でも目にする事も出来ます。C型印刷機は民間で当社のみ所有する貴重品です。 |
D型券「縦30ミリ×横88ミリ」 |
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他のサイズと比べ情報量が多く印刷出来、使い勝手の良い大きさです。生産量は「A型券」「B型券」と比べて少ないですが、指定席特急券等の高額券やお土産目的の観光記念入場券などに多用されました。硬券板紙の全紙から取れる枚数は72枚でしか取れなく、製造量の多い券種としての使用は避けられた様です。 |
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各券の大きさですが、インターネット上では違うサイズ表記も散見されます。上記サイズはあくまでも硬券印刷機の印刷可能サイズ=日本国有鉄道の旅客営業規則に基づいてますので、国鉄・JR以外の会社線のサイズと相違する場合が有ります。例えば「57.5ミリ」を「57ミリ」や「58ミリ」としている会社も有ります。また現物から図ってサイズを割り出しますと、紙は収縮しますので、製造時に57.5ミリでも経年劣化でサイズが変わる場合が有ります。それに加えて印刷場の断裁時におけるサイズ相違も考えられます。これは断裁機の性能の問題ですが、雄歯と雌歯の抑えネジの緩みによる場合や歯の摩耗が一因としております。
たった4種類の大きさですが、正確かつ大量に断裁するのはとても大変な事なのです。1ミリでもサイズが狂えば輸送時の所定の箱に収まらなかったり、駅での硬券箱にはい入らなかったりもするのです。 |
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切符としてあまり見掛けないのは何故? |
JR各社では乗車券としての役割は既に終えており、一部の特殊な場合と記念切符のみ硬券が使われております。平成2年度末からJR東日本を皮切りに、自動改札機とPOS端末の導入で硬券の使用は廃止されました。硬券は自動改札機に通せない事が主な廃止の要因です。連絡切符を発売する私鉄も、それに見習い廃止を進めて来ました。今では一部の私鉄のみで硬券は活躍しますが、機械発券の切符に主役を譲っております。 |
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それでも無くならないのは何故でしょう? |
機械発券の切符に主役を譲っても、ローカル私鉄や一部の私鉄ではまだまだ使われております。自動券売機や自動改札機の費用対効果が無い駅や、お土産や収集品として硬券売り続けている鉄道会社も有ります。また硬券を廃止したJR各社でも、記念切符は硬券で発売する事が多く有ります。これはSLと同じで、かつて活躍して現在見掛けない鉄道文化遺産なのです。SLが走れば多くの沿線が賑わう様に、硬券も記念切符で発売すると多く売れるのです。 |
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